ホーム > 防災対策 > 地震から子どもを守る

防災対策

だんごむしのポーズ
地震が起きる前に

小さな子どものいる家庭では一般的な防災対策だけでは十分に子どもをまもることができません。住居形態、家族構成、ご自身の体力など、防災はその家庭にあった独自の備えを講じる必要があります。ご家庭に小さいお子さんがいらっしゃる場合、体の守り方、避難方法、持ち出し品などをしっかり考えておく必要があります。

まず、お子さんの人数や、普段お子さんが過ごしている場所を頭に入れながら、激しい揺れからいのちをどう守るのかを考えましょう。閉じ込めや負傷したときなどの最悪の事態を思い浮かべながら対応策を考えておくことが重要です。ご主人など離れている家族がいる場合にはその家族との連絡や、近隣の被災状況や室内の被害状況の確認、避難する際のブレーカーの電源オフなど、すべきことがたくさんあります。あらかじめ発災直後からの行動イメージや避難の段取りを自宅の間取り図を頭に入れて組み立てておきましょう。

何の備えなしに子どもを守れるほど、災害は甘くありません。小さなお子さんのいのちを守れるのは家族以外にありません。取り返しのつかない後悔をする前に、親子がそろって生き延びるための対策を始めましょう。

地震が起きる前に
子どもの目線になって安全性を確かめる

防災対策の基本は、まず不要な物を置かないこと。いざ地震が起これば、ありとあらゆる家具が子どもの命を奪う凶器になる可能性があるのです。大きな家具の固定はもちろんのこと、開き戸や引き出しをフックで固定すれば被害も最小限になります。

そのうえで、大切なのは子どもの目線になること。大人には低い位置と思っていた棚の上のものが、子どもにとっては頭を直撃する位置にあることも。「大人にとって背の低い家具でも、子どもには大きな家具になる」ことを忘れずにいましょう。

ふだんからいつも「もしものときは」と考える習慣を!

小さい子どもは自分で自分の体を守ることができません。近くにいる大人が守らなければいけないのです。地震はいつ、どんな場所で起こるかわかりません。突然グラッと揺れて頭が真っ白になって叫ぶだけしかできなかった、ということのないようにふだんから「いま地震が起こったらどうするか」を想定して、自分が何をできるのか考えておくようにしましょう。子どもがいちばん長い時間を過ごす自宅においては、「この空間にいれば絶対に安全」という場所をつくることが大切。部屋ごとにあれば理想的です。

地震がきたら
危険なものから離れる

転倒するものから離れるのはもちろんですが、案外気づきにくいのが上から降ってくるもの。照明器具の下や窓のそばから離れることも忘れずに。大きな揺れに揺さぶられた照明器具が天井にあたって割れたり、窓ガラスが割れて飛び散ることもあります。高層住宅では揺れの振幅が大きいので窓から飛び出してしまう危険も。グラッときたら、まず照明器具の下や窓のそばからは離れるようにします。照明を選ぶときは天井に直接取りつけるタイプが比較的安全です

火災が発生してもあわてない

揺れているあいだに火のついた鍋やコンロに近づくのは危険。炎は天井に燃え移るまで3~5分はかかります。揺れは2分程度でおさまるため、身の安全を優先してください。消火はそれから!

赤ちゃんと自分を守る姿勢を!

揺れを感じたら、まずは赤ちゃんと自分を守る姿勢をとることが肝心。とっさに抱っこをするとき、いつもの抱き方だと腕の中から飛び出してしまう危険性があります。こどもと向かい合わせにして保護者のおなかあたりに子どもの頭をおき、保護者は子どものおしりを抱きかかえるようにからだを丸めます。子どもと自分の頭を守る姿勢を意識しましょう。 この訓練を遊びに取り入れると、いざというときに赤ちゃんが嫌がることもなくなります。

揺れがおさまったら避難経路を確保

外に出られる逃げ道の確保を。玄関がダメなら、ベランダから避難します。ただ、マンションや集合住宅の場合、上層階になればなるほどベランダからの避難は困難。小さい子どもがいる家庭では、ドアの変形を防ぐ耐震緩衝装置が市販されているので、それを利用して玄関から逃げられる手段を確保しましょう。

情報を収集して避難を決断

テレビやラジオで地震の規模、被害状況などを確認し、避難する必要があるときは必要最小限の荷物を持って家から離れます。口コミによる情報は誤りが多いので、注意しましょう。家から離れるときには、必ず戸締まりを忘れないようにしてください。避難の時にベビーカーは使わず、肌身離さず抱っこを。赤ちゃんの様子が見えないおんぶよりも、抱っこをおすすめします。

地震から子どもを守るQ&A
小さい子どもがいる家の『地震』対策について教えて下さい。   (家具の転倒防止策、見落としがちな場所など)

何より大切な家族の命を守るためにまずは家の中の安全を確認しましょう。重い家具が倒れたり、本や飾りが落ちたりしない、割れたガラスでケガをしない安全な環境を心がけましょう。賃貸など家に傷をつけられない場合でも「耐震ジェルマット」や「つっぱり棒」「耐震収納ラック」などで固定する、「つかまりん棒」でダイニングテーブルを安全な空間にするなど壁に傷をつけない様々な固定方法があります。

大きな揺れでは家にある固定していないものすべてが凶器になります。物は「コトン」と倒れると思っている方も多いのですが大地震では「ブンッ」と飛びます。自分の好みで揃えたものが自分や家族の命を脅かしたり、奪ったりすることのないよう、小さい子どもがいる家庭では安全な環境を優先してなるべく物を置かない、飾らないようにしたいものです。

ただし、毎日の生活で楽しく暮らすことを諦めなさいということではありません。たとえば家族の写真を飾るのが好きな方は、写真盾のフレームをガラスや木枠から布や革に変える、ガラス板もアクリルシートに素材を変えたり、照明もインテリアライトとして和紙素材を選ぶなど好きなことを楽しみながら安全レベルを上げる方法があります。最近では見た目ではわかりにくいのですがプラスティック製の花瓶などもあります。家の中にあるもので固定しにくいものは、万一当たったとしても痛くない、落ちても破損しない散らない安全素材を選びましょう。

いざ、災害に遭ったときに、どんな行動をとったらよいのか、また、どんな行動をとってはいけないのか、それぞれの災害について教えてください。
推奨行動
地震
子どもと離れている場合まず自分の身の安全を優先し、揺れがおさまったら子どものもとへ。保護者が生きていなくては、子どもは守れません。子どもを守るには普段から子どもの居場所を安全な環境にして。事態が深刻化してからではなく、一旦は避難所へ。被害の範囲、程度などの情報を収集して自分がどのような状況に置かれているのかを知り、その後の行動の判断をします。また、避難所に遅れていくと教室や体育館がいっぱいで廊下や階段、昇降口など劣悪な環境に身をおくことになります。
火災
初期消火は大事だけれども赤ちゃんがいる家庭では逃げ遅れることのないように大声で周囲に火事を知らせながらまずは避難します。火事は火よりも煙が恐ろしいことを忘れないで。有毒ガスはもちろんのこと、赤ちゃんは気管が細いので、すすを吸うと気管がつまり窒息してしまいます。
水害
子どものいる家庭では大雨が降ったらラジオやテレビ、インターネットなどで情報を得て早めの自主避難を心がけます。パパが帰って来るまでは、などと待たずに近所の人の助けを借りて避難します。
注意すべき行動
地震
避難するときに赤ちゃんをベビーカーに乗せてはいけません。抱っこひもなどでしっかり抱きます。(荷物が重ければベビーカーに荷物を乗せてもいいですが、瓦礫の山でベビーカーでは通れないことがあることも覚悟しておきましょう)  被災地の劣悪な環境に赤ちゃんを留まらせず震災疎開を早い段階で考えます。 大勢が集まる場所でどのような病気をもらうかわからないので免疫力が低い赤ちゃんには危険です。しかも病院も正常に機能していない可能性もあるので、自治体が協定を結んでいる宿泊施設や親戚などの家に疎開することをかんがえましょう。あらかじめ疎開先の情報を入手しておくことです。
火災
日ごろから、どんなに短い時間でもたとえ、子どもがぐっすり寝ていたとしても子どもだけで留守にしないように。留守中の火災でなくなる子どもの犠牲が絶えません。 火災が発生したら、絶対に戻ってはいけません。二度と手に入らないからといって赤ちゃんのメモリアル写真やビデオなどを取りに戻らないことです。あっという間に煙が充満して有毒ガスを吸う危険があります。    煙が充満しているとき、大人がするようにハンカチで赤ちゃんの口と鼻を覆わないようにします。気管が細いので窒息してしまいます。親の洋服の内側に入れる、おくるみなどで全身を軽くくるむなどして避難します。
水害
逃げ遅れて水位が腰近くに達したり、流れが速いようなら無理して避難しないで高いところで救援を待ちます。水が入るからと、ドアを閉めてはいけません。水圧でドアが開かなくなり閉じ込められます。地下室や地下街にいたら浸水に注意します。外の様子がわからないので傘を持った人がひどく濡れた格好をしていたら大雨と判断してすぐに地上に出ます。
過去の大災害で、赤ちゃんがいる家庭が被災した場合、困ったことはどんなことだったのでしょう。
  • 授乳やオムツ替えの場所がない。
  • 泣いたりぐずったりしたときに周りに気を遣う。
  • 被害を受けた家の片づけをしたくても預ける先がない。
  • 毎日沐浴させることができず肌を清潔に保てないので湿疹、オムツかぶれがひどくなった。
  • 環境が変わり落ち着かない、ぐずる、不機嫌になった。
  • ストレスで母乳が出なくなった。粉ミルクや哺乳瓶の備えをしていなかった。
それぞれの災害に備えて、赤ちゃんのいる家で「準備しておくべきこと」を教えてください。
地震
「安全な環境づくり」=倒れたり、落ちてきたりするものがない、ガラスでケガ をしない。
火事
  • 「燃えない環境づくり」=防炎加工されたカーテン、絨毯などを選ぶ。
  • 燃えたときに毒ガスを発生させないように化学繊維のものは避ける。
  • 赤ちゃんの周りに燃えやすいものを置かない。
水害
「濡れては困るもの」は上階に置いておく。写真アルバム、ビデオなど。  冠水すると汚水も流れるので、浸水した水に赤ちゃんを触れさせないように ベビーバスなどを用意しておき、避難に備える。 地震のときの避難場所と水害では異なることがあるので事前に確認しておく。
赤ちゃん、小さな子どもが居る家庭の場合『非常袋』はどんな物を用意しておけばいいのでしょうか。
  

月齢や年齢によって赤ちゃんや小さな子どもが必要とするものは大きく変わります。しかし、発災時には公的機関からそのようなきめ細かい支援を受けるのは困難です。必要なものはあらかじめ保護者がしっかりと準備しておくことが大切です。

赤ちゃん用品で例を挙げますと、

  • 紙おむつ(衛生的に過ごすため、できるだけ多めに入れておきたいもの。成長に応じてサイズが変わるので、定期的に確認しましょう。)
  • 着替え(汗っかきな赤ちゃんには着替えを多めに。災害時は体を保護するために夏でも長袖長ズボンのセットは一組いれておきましょう。)
  • ガーゼ(汗やよだれをふいたり、おふろに入れないときに体をふいたりするのに、ガーゼは多めに用意しましょう)
  • タオル&バスタオル(寝具やおくるみ代わりとしても役立ちますし、周りに人がいるところで母乳をあげる場合、胸元を覆うときにも重宝します。)
  • 離乳食(レトルトパックやビン入りのもので現在の月齢のものと、少し先の離乳食の両方を入れておくと安心です。)
  • 消毒剤(哺乳びんなどを消毒するための消毒剤も必要。水に溶かして使えるタブレットタイプが便利です。)
  • 清浄綿(乳首や顔、体の清浄ができるので何かと便利。使い捨てタイプが衛生的。)
  • おしりふき(赤ちゃんのおしりだけでなく、手や手に触るものをふいたりするときにも重宝します。)
  • 母子手帳(赤ちゃんの健康の記録や予防接種の状況などが書かれていますから、避難するときは忘れず持ち出しましょう。)
  • 健康保険証(医療機関にかかるときに必要です)
  • つめ切り(赤ちゃんのつめはすぐに伸びるので顔や目の保護のためにも必ず入れておきましょう)
  • ベビーソープ(保存に便利なケース入りの物がベスト。敏感な赤ちゃんの肌をできるだけ清潔に保ちましょう。)
  • ゴミ用ビニール袋(ゴミをすぐに捨てられない状況を考えると使用済みのおむつを入れるビニール袋は必要です。密封できたり防臭効果があるものを用意しましょう)
  • 医薬品(常備薬はもちろん、赤ちゃん用の薬も用意しておきましょう)
  • カイロ(体を保温するだけでなく離乳食を温めるのにも便利。ミルクを温めるには、靴用カイロがおすすめです。靴用のカイロは温度が高いので、ミルクをつくるときにも便利。お湯が手に入らないときは、水の入った哺乳瓶とタオルの間に入れて温めましょう)。
  • 抱っこひも(避難にベビーカーは危険です。抱っこひもは必ずもって行きましょう)

赤ちゃんはや子どもは成長が早いので必要な物もサイズもすぐに変わります。中身 の見直しは、できれば月1回こまめに確認しましょう。面倒に思うときは普段持ち歩い ているマザーズバックに非常時必要になるものをプラスするのも一案です。

『防災』について普段から子どもにどのように教えるのが効果的ですか。

ひとたび大地震が起きれば、たとえ大人が子どもの目の前にいても必ず守れるとは限りません。成長とともに、子どもに自分の守り方を教えることが大切です。過度に恐怖心を与えるような教え方ではなく、普段の生活のなかで楽しさを与えながらしっかり学ばせることのできる方法を考えましょう。

子どものころに経験したことはのちに大きな意味をもつこともあり、大人への準備期間として一生の礎となる大切なことを日常生活から学びます。この頃から防災を考えさせることは大変重要で、「日常生活に潜む危険を知り、安全を意識する力」「場所や状況を適切に判断し体を守る行動力」「命の大切さや重み」を育み、「自分の命は自分で守る」という意識を形成できます。その意味でも防災教育を幼児期からはじめることは意義深く、家庭内においての保護者の意識が子どもの「自分を守る意識」の定着に大きく左右します。

家庭では、日ごろ読み聞かせしている本の一冊として防災絵本を見せたり、遊びのひとつとして防災カルタ、防災ソング、防災すごろく、防災紙芝居などを使うのも良いでしょう。 体を使って楽しく体得できる「揺れたらダンゴムシ (地震発生時の身の守り方を教える)」と遊び歌の組み合わせもおすすめです。

『災害』に対する危機感を親として、普段から持たなくてはならないという   メッセージをお願いします。

だれしも平穏無事な生活の中で、災害のような悪いことを考えたくないものです。しかしだからといって目を背けていいということでもありません。まったく備えをしていなくてもいざというときは、命がけで子どもを守ると言う人がいますが、どんなに強い気持ちがあっても、自然の凄まじい力に対して事前の備えがなければ守ることは困難です。

家族にどうしても守りたい命があるなら、自宅の耐震性の確認、室内の安全を保つ、非常時の備えによって被害を最小限にとどめることができます。今世紀は災害が起きやすいと言われていて日本でも各地で大地震が懸念されています。関心を持たずに生きることもできますが、地震の多い日本に生きる覚悟を持って災害と向き合ってほしいと思います。 子どもは生まれてくる環境を選べません。親の危機意識が薄いために、大切な子どもの命が犠牲になることのないよう、できるところから少しづつ始めてみてください。